トオキ ハル

時は早春、卒業式も間近な三月のとある日。

「仲良し三人組」の高校生たちが、思い出の地で遭遇したある事件とは…?

――自我崩壊?――

 

 再び混乱してきた気持ちを静めるために、3人は階段に座り、早川のパソコンを眺めた。そうしてメールやツイッターに、先ほどの書き込みの反応がないか、それを待ちわびる。
…だが、何も反応は返ってこない。まるで、そんな書き込みなど無かったように。
 外に連絡が取れない。その事実に、3人は気付き始めていた。

 

樋口:だよなあ。でもそのことを実感すると、SANチェックなんだよなあ。(苦笑)

相模:でも実感しないと、先に進まないんだな。(笑)

KP:とりあえず、〈アイデア〉してみ?(笑)

樋口:ああ、74でぎりぎり成功しちゃうところが、俺だな。(笑)

相模:うん、成功しちゃうな。(笑)

KP:全員成功? では、そういう事になってるような気がし始めました。軽く、SANチェック。

 

 このSANチェックは早川と相模が失敗。それぞれ1点の正気度を失い、「別荘地のログハウスに幽霊が出る」という噂の記憶と、「悔しい」「助ける」というキーワードを獲得した。

 

樋口:…今何時かなあ、と腕時計を見る。

KP:うん、全員の時間がばらばらです。

樋口:え? …おい。自分の時計と、スマホの時計を出してみる。

KP:うん、それもばらばら。

相模:なにこれ!? ちょっ(笑)!

KP:はい、SANチェックー(笑)。

樋口:ああ、成功。

相模:うん、大丈夫。(笑)

早川:なんかなあ、オチだなあ。(一同笑)1点ですか?

KP:(大笑いしながら)うん、1点。(笑)なんか、さくさくいくよなあ。(笑)そうすると、また子供の頃、小学校高学年ぐらい? なんだけど。この3人で街中で一緒に遊んでる。時の記憶。なんだけど、何か、欠けてるような感覚がある。もっと具体的に言うなら、「一人足りない」感覚だ。

早川:ふんふん。でも、誰が、ってのは分からない?

KP:そうだね、漠然とした、何か欠けてる感覚。で、キーワードは、これだ。(「忘れる」を渡す)

早川:ちょっと、震えだしてくると思うんだ。おかしいから。(笑)で、「お、俺たち、どうなっちゃったんだろうな」って言って、考え込むしぐさを。

樋口:俺たちが一体、何をしたって言うんだよー。(笑)

 

「俺たちが一体、何をしたって言うんだよ」
樋口がそう言った、その背後で。
ログハウスの入口のドアが、細く開いた。
そこから覗いているのは、幼い鳥越要の顔。
それを見たのは不幸にも、樋口と向き合って話していた相模だった。

 

KP:SANチェック(笑)。

相模:こわー!(笑)うん、成功成功。(笑)

KP:じゃあ、この場合は1点。

相模:「うわぁっ!?」(笑)

早川:その声にびっくりしちゃう。「脅かすなー!?」

樋口:「急に大声、上げるな!?」

相模:ゆ、指を差す!「ド、ドアのところに!」

樋口:振り返る。

KP:うん、ドアが細く開いてるけど、何も見えない。

樋口:何もいないじゃないか。

相模:あれ、でも、子供のカナですよね?「か、か、カナが、覗いて」

KP:で、フラッシュバックする記憶。要さんなんですが、体が弱いというのはさっき言いましたが、遊んでる最中に、気絶したことがあります。

相模:ははあ。

KP:それで親とか来たんですけど、要さんの。特に強く怒られた、という記憶がありません。で、〈アイデア〉。

相模:うん、成功。

KP:その時の要さんの親たちの様子が、仕方ない、みたいな感じだったことを、思い出しました。んでえーっと、キーワード。(「恨む」のカードを渡す)

樋口:キーワード、何だった? …ははあ。「おい、脅かすなよ」

相模:だって、いたんだよ!

樋口:立ち上がる。階段を登る。半開きになってる扉を、ばっと開けて中を見る。

KP:はい、さっきと変わりありません。要さんは倒れたままです。で、顔からずり落ちたハンカチも、そのままです。

樋口:…何にも変わってないぞ。

相模:恐る恐る、覗き込む。

早川:俺も階段まで行くね。「とりあえず、中入ろうか」適当なこと言って、状況動かそうとしてみる。

樋口:こんな状況じゃ、寡黙キャラもやってられねえよなあ、と思いつつ。(一同笑)プレイヤーは(笑)。

KP:なるほど(笑)。

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